「私たちは悔しいんです。」
その言葉を掲げる契機となった東日本大震災から7年。私たちの最初の植樹地である陸前高田の浄土寺です。
未曾有、想定外と言われたあの東日本大震災は、津波堆積物の年代比較調査により1,100年前にも同規模の津波が発生したことが震災以降が分かっています。もしこのことが分かっていたのなら、これだけの人がなくなることはなかったのではないか。「私たちは悔しいんです。」この言葉にはそんな思いが込められています。
平らな場所に街ができることは避けられなくても、次のこの街の命を守るために津波の最大到達地点を後世に伝えたい。こうして私たちの津波の到達地点に桜の木を植える事業は始まりました。その総延長は170km。陸前高田市内の最大津波到達地点に10m感覚で桜の木を植え、17,000本の桜並木を後世に伝える事業です。2011年10月に始まってからこれまでも、地域の住民の皆さまだけではなく、日本全国の皆さまにご尽力を頂いてきました。本当に心から御礼申し上げます。ありがとうございます。
あの日から7年、街は復興に向けて一歩一歩進んでいきます。昨年の春には中心市街地にアバッセがオープン。その後商業地域に少しずつ賑わいを取り戻すべく徐々に中心地域にも店舗が戻りつつあります。決して容易な事ばかりではなりませんが、この街の復興は街に関わる全ての方にとっての大きな願いです。
一方で震災の直接的な痕跡はほぼ姿を消しました。震災の痕跡が消えていくことは、街の復興の過程のなかで避けては通れないことです。消えていくことで気持ちが整理されることも事実としてあるでしょう。しかし教訓だけ後世に伝えていかなければ、私たちと同じ悔しい思いが繰り返されてしまいます。そのことを避けることが私たちの願いです。
私たちの原動力は「悔しさ」です。それが晴れることはきっとありません。しかし今私たちを支えているのはそれだけではありません。地域の皆さま、そして全国の皆さまからの東日本大震災の教訓を風化させてはいけないという願いなのだとも強く感じています。私たちの事業は次世代のこの街の命を守るために始まりました。しかしその後も大規模な災害は繰り返し発生し、多くの命が自然災害により失われています。東日本大震災の教訓を多くの方にお伝えすることで、災害による犠牲者を一人でも減らすことはできないか?その思いで日本全国の皆さまとの植樹会を続けています。災害で命が失われることで生まれる悲しみを、少しでも減らすために。私たちの教訓を日本全国の方にお伝えしたい。
東日本大震災によって今も多くの人が傷ついたままです。しかし記憶も、悔しさも、教訓も、そして未来への思いも含め、全ての人が意味を持てる東日本大震災にすること。東日本大震災があったから、今の私たちがあるのだと思えるようになること。傷ましいものだけではなく、愛でられるものとして桜の並木が人々に伝わっていってほしいと願っています。それこそが私たちの目指す伝承だと思っています。
伝承とは簡単なことではありません。一時的な取り組みではなく、連綿と多くの人々が思いを持ち続けてこと成し得るものです。私たちの事業はまだ始まったばかり、これからも多くの皆さまにご参加いただけるよう続けてまいります。私たちはこの桜の下で笑うことはできないかもしれません。でも次の世代の人々にはその下で笑顔になってもらいたい。
いつかその日が来ることを信じて歩みを続けていきます。
東日本大震災で亡くなられた全ての方のご冥福をお祈りして。
認定特定非営利活動法人 桜ライン311
代表理事 岡本翔馬 理事スタッフ一同
桜ライン311活動ご苦労様です。前にもお話ししましたが高田町から見て今泉の龍泉寺の右側に小さな杉山が松坂新右衛門定宣(高田松原の植栽者)等が眠る松坂家のお墓です。この度津波の塩害で立ち枯れし、伐採も已む無しと市役所の菊池満夫理事(友人)から写真を見せられました。貴会とも何かの縁と思い桜ライン候補地にさせて頂きたく思います。高田の浄土寺は祖父の弟松坂徳三郎が菅原宏潤となり後を継いでいます。松坂泰盛先生とは従姉妹です。